自社株の相続税対策とは?|評価引き下げと納税資金づくりの方法
自社株の相続では、換金しにくい株式に高い評価額がつき、想定を超える相続税が後継者にのしかかることがあります。納税資金が用意できなければ、経営権や自宅を手放さざるを得ない事態も避けられません。
負担を抑える鍵は、株価評価の引き下げ、納税資金の確保、議決権の集中の三つを、生前の早い段階から組み合わせて進めることにあります。評価方式の基礎から具体的な手法、制度の使い方まで、順を追って押さえていきましょう。
1. 自社株の相続税対策とは?放置が招くリスクと全体像

1.1 自社株が相続税額を大きく押し上げる理由
自社株の相続税対策が必要になる最大の理由は、売って現金化しにくい資産であるにもかかわらず、相続税評価だけは高くなりやすい構造にあります。上場株式なら市場で売却できますが、非上場の自社株には買い手がつかず、手元に現金が入らないまま税額だけが確定するのです。
業績が好調で内部留保が厚い会社ほど、株価評価は上がっていきます。長年黒字を重ねてきた優良企業の株式が、数千万円から数億円規模で評価されるケースもあります。経営者本人には「ただの自社の株」でも、税務上は高額な財産として扱われる点に注意が必要です。
評価は高いのに換金できないというねじれこそが、自社株相続の最初の壁になります。この構造を理解しないまま相続を迎えると、後継者は納税の原資を自力でかき集めることになりかねません。だからこそ、評価額の把握を出発点に据える意味があるのです。
1.2 対策を怠ると生じる納税資金・遺留分・経営権の3つのリスク
対策を先送りにした場合に現れるリスクは、大きく三つに整理できます。いずれも会社の存続と家族関係の双方に関わるため、早い段階で全体像をつかんでおきたいところです。
以下は、自社株の相続対策を怠ったときに直面しやすい代表的なリスクです。
納税資金の不足:高額な株式評価に対して現金が足りず、納税期限に間に合わないおそれがあります。
遺留分侵害額請求:自社株を後継者へ集中させると、他の相続人の遺留分を侵害し、金銭請求に発展する場合があります。
経営権の喪失:株式が複数の相続人に分散し、後継者の議決権比率が下がって経営判断が滞るケースもあります。
これら三つは互いに絡み合います。納税資金を工面するために株を売れば議決権が薄まり、株を集中させれば遺留分の火種になります。一つの対策が別のリスクを生まないよう、全体を見渡した設計が欠かせません。
1.3 自社株の相続税対策を貫く3つの柱
自社株の相続税対策は、突き詰めると三つの柱に集約されます。評価引き下げ、納税資金の確保、そして議決権の集中です。この三軸を並行して進めることが、負担を抑えながら経営を守る前提になります。
一つ目の評価引き下げは、株価そのものを合法的に圧縮し、課税対象の元を小さくする発想です。二つ目の納税資金確保は、下げきれない税額に対して支払う現金をあらかじめ用意しておく備えを指します。三つ目の議決権集中は、後継者が安定して会社を動かせるよう株式を一人に寄せる取り組みです。
大切なのは、三本の柱を別々に扱わず、順序と時間軸をそろえて動かすことにあります。評価が下がったタイミングで株を移し、その裏側で納税資金を積み立てる、といった連動が効いてきます。単発の節税策を寄せ集めても、全体の負担は思うように下がりません。
2. 自社株の相続税評価はどう決まる?評価方式の基礎

2.1 自社株(非上場株式)の3つの評価方式と特徴
自社株の評価額は、会社の規模や株主の立場によって適用される計算方式が変わります。取引相場のない株式には、大きく分けて三つの評価方式があり、どれが適用されるかで税額は大きく動きます。まずは各方式の性格を押さえておきましょう。
次の表は、非上場株式の主な評価方式と、それぞれが向く場面を整理したものです。
評価方式 | 主に使われる場面 | 特徴 |
|---|---|---|
類似業種比準方式 | 同族株主が取得する大・中会社 | 事業内容が似た上場会社の株価を基準に評価する |
純資産価額方式 | 同族株主が取得する小会社・資産保有型 | 会社の資産と負債を相続税評価に洗い替えて算出する |
配当還元方式 | 同族株主以外の少数株主が取得する株式 | 受け取る配当をもとに評価し、金額が低くなりやすい |
小会社では、類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる併用方式がとられる場合もあります。
表からもわかるとおり、同じ株式でも取得する人によって評価が変わる点が、自社株評価の難しさです。自社がどの区分に当たるかを把握することが、対策の第一歩になります。
2.2 誰が相続するかで自社株の評価方式は変わる
自社株の評価は、株式そのものの価値だけでなく、それを取得する人の立場によって決まります。会社を支配する同族株主が取得する株式は、原則的評価方式である類似業種比準方式や純資産価額方式で評価されるのです。
一方、同族株主以外の少数株主が取得する株式は、特例的な配当還元方式で評価されます。配当還元方式は年間の配当額をもとに計算するため、原則的評価方式より評価額が低く出やすい傾向があります。
後継者など同族株主等に該当する人が取得する株式は原則的評価方式で評価され、同族株主等以外の株主が取得する株式は配当還元方式で評価されます。経営に関与せず保有株数が少ない親族であっても、同族株主等に該当すれば配当還元方式が適用されるとは限りません。
この違いを踏まえると、誰にどれだけ株を渡すかという分け方が、そのまま税負担を左右することが見えてきます。後継者への集中は経営の安定に必要でも、その株式には原則的評価が適用される点は避けられません。取得者ごとの評価の違いを前提に、渡し方を設計する必要があります。
3. 自社株の相続税を下げる評価引き下げ対策

3.1 役員退職金の支給で自社株評価を引き下げる
役員退職金の支給は、自社株評価を下げる代表的な手法です。退職金として会社から現金が支出されると、その分だけ会社の純資産と利益が減り、株価評価が引き下がる仕組みになっています。オーナー経営者の勇退に合わせて実行しやすい点も特徴です。
以下は、役員退職金を評価対策として使う際の主な効果と留意点です。
純資産の圧縮:退職金の支出で会社の資産が減り、純資産価額方式による評価が下がります。
利益の減少:退職金は損金となり、類似業種比準方式で使う利益指標も低下します。
死亡退職金の非課税枠:死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、相続財産からも一定額が控除されます。
金額の妥当性:不相当に高額な退職金は損金と認められないおそれがあり、在任年数や功績に見合う水準に抑える必要があります。
役員退職金は、評価引き下げと納税資金の準備を同時に進められる数少ない手法です。支給時期を相続や事業承継の計画に合わせることで、効果はいっそう高まります。ただし金額の根拠づけを誤ると否認されかねないため、規程の整備を伴わせることが前提になります。
3.2 不動産やオペレーティングリースを活用し自社株評価を下げる
不動産やオペレーティングリースの活用は、会社の純資産と利益を圧縮し、自社株評価を下げる有力な選択肢です。手元資金を評価額の低い資産へ組み替えたり、減価償却で利益を抑えたりすることで、株価の元となる指標を小さくできます。
不動産では、現預金を賃貸物件に組み替えることで、純資産価額方式による自社株評価を引き下げられる場合があります。ただし、課税時期前3年以内に会社が取得または新築した土地・建物は、原則として通常の取引価額で評価されるため、取得直後から評価引き下げの効果が生じるとは限りません。
オペレーティングリースは、航空機や船舶などをリース事業へ出資する仕組みで、初期に大きな減価償却費を計上して利益を圧縮し、株価評価を下げる効果が見込めます。事業投資として一定のリスクを伴う点は理解しておく必要があります。
こうした組み換えは、単なる節税ではなく資産の中身を入れ替える経営判断でもあります。資産の有効活用と評価対策を両立させる進め方は、不動産と金融の双方に通じた専門家と組むことで、リスクの見極めと実行可能性の判断がしやすくなる領域です。
3.3 配当の引き下げと持株会社化で評価を圧縮する
配当政策の見直しと持株会社化は、株価評価を構造的に圧縮する対策です。類似業種比準方式では配当・利益・純資産の三要素が評価に影響するため、配当水準の調整が評価額に直結します。
次に、配当と持株会社を使った評価圧縮の主な着眼点を挙げます。
通常配当の見直し:類似業種比準方式では、直前期末以前2年間の通常配当が評価に影響するため、中長期的な配当政策の見直しによって評価額が下がる場合があります。
持株会社の設立:事業会社の上に持株会社を置き、株式の移転や経営管理を行いやすくします。
評価上の注意点:持株会社が株式等保有特定会社に該当すると、原則として純資産価額方式で評価されるため、自社株評価が下がらない、または高くなる場合があります。
配当の引き下げは即効性があるとは限らず、株主への還元方針とのバランスも求められます。持株会社化は株式の移転や経営管理に役立つ一方、会社の資産構成によっては自社株評価が下がらない場合があります。設立コストや組織再編の手間も踏まえ、事前に評価額を試算したうえで判断する必要があります。
3.4 生前贈与で自社株を計画的に移転する
生前贈与は、株価が低いうちに自社株を後継者へ移し、将来の相続財産を減らす基本戦略です。相続を待たずに計画的に移転することで、業績向上による評価上昇を先回りできます。
自社株の生前贈与は、次の手順で進めると整理しやすくなります。
現状の株価を試算し、いつ・誰に・どれだけ移すかの移転計画を立てる。
暦年贈与で年間110万円の基礎控除を使い、毎年少しずつ株式を移していく。
まとまった株数を一度に移したい場合は、相続時精算課税制度の2,500万円の特別控除を検討する。
業績や相場の影響で評価が下がった局面を選び、そのタイミングで移転を実行する。
暦年贈与は時間をかけて負担を分散でき、相続時精算課税は早期にまとまった株を移せる利点があります。どちらを選ぶかは、後継者の年齢や会社の成長段階によって変わってきます。移転を先送りするほど株価が上がり、贈与税・相続税の負担が重くなりがちな点は意識しておきたいところです。
4. 自社株の相続税を払う納税資金を確保する方法
4.1 生命保険で納税資金と代償分割の原資を準備する
生命保険は、下げきれない相続税に対して確実な現金を用意する手段です。被相続人の死亡後、請求手続きを経て保険金を受け取るため、納税期限までに資金を手当てしやすく、株式を売らずに納税へ充てられます。
生命保険を納税対策に使う際の主な組み立て方を整理します。
会社契約の活用:会社が契約者となり、死亡退職金や金庫株買い取りの原資に充てる方法があります。
死亡保険金の非課税枠:被相続人が保険料を負担し、相続人が死亡保険金を受け取る場合は、「500万円×法定相続人の数」の非課税限度額が適用されます。
代償分割の原資:後継者を受取人にすれば、他の相続人へ支払う代償金の原資として使えます。
生命保険の強みは、受け取る時期と金額があらかじめ見通せる点にあります。株式や不動産のように売却の手間や価格変動に左右されません。後継者が保険金を代償金に回せば、自社株を分散させずに公平性を保つ余地も生まれます。
4.2 金庫株で後継者の相続税の納税資金をつくる
金庫株は、後継者が相続した自社株を発行会社が買い取り、現金化する仕組みです。売り先の乏しい非上場株式に会社という買い手を用意することで、納税資金を捻出できます。手元に株式しかない後継者にとって、有力な選択肢になります。
会社が自己株式を取得すると、後継者は売却代金を相続税の支払いに充てられます。相続で取得した株式を一定期間内に発行会社へ譲渡した場合、通常はみなし配当として課税される部分に特例が適用され、譲渡所得課税で済むケースもあります。ただし会社側には、買い取りに充てる自己資金や分配可能額の確保という条件がついて回ります。
金庫株は便利な一方、買い取りによって会社の純資産が減り、残る株式の一株当たり評価に影響する点は見落とせません。実行にあたっては、資金繰りと他の株主への影響を合わせて検討する必要があります。単独の手法として使うより、生命保険などと組み合わせて原資を厚くする進め方が現実的です。
5. 事業承継税制と遺言で自社株の相続対策を固める
5.1 事業承継税制による相続税の納税猶予とは?
事業承継税制は、一定の要件を満たすと、自社株にかかる相続税や贈与税の納税が猶予される制度です。猶予された税額が免除されるのは、後継者が死亡した場合などの一定の事由が生じたときであり、事業を継続するだけで自動的に免除されるわけではありません。
法人版事業承継税制の特例措置を利用する場合は、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成した特例承継計画を、2027年9月30日までに都道府県へ提出する必要があります。
また、対象となる株式の贈与または相続は、2027年12月31日までに行われる必要があります。適用後も、都道府県への年次報告や税務署への継続届出などが必要です。
この制度は負担軽減の効果が大きい半面、長期にわたる制約を受け入れる覚悟も必要です。他の対策と比べてどこまで踏み込むかは、後継体制の安定度によって判断が分かれます。適用の可否は会社ごとに大きく異なるため、専門家と要件を一つずつ確認しながら進める姿勢が現実的です。
5.2 遺言と遺留分対策で自社株の集中と経営権を守る
遺言と遺留分対策は、自社株を後継者へ確実に集中させ、経営権を守るための仕上げです。遺言がなければ株式は法定相続人で分割協議の対象となり、議決権が分散して経営判断が滞る事態を招きかねません。
株式の集中と家族の公平を両立させる主な備えを挙げます。
遺言による指定:後継者へ自社株を相続させる旨を遺言で明示し、分割協議による分散を防ぎます。
遺留分への配慮:他の相続人の遺留分を侵害しないよう、代償金や他の財産の配分をあらかじめ設計します。
民法特例の活用:経営承継円滑化法の除外合意により、生前贈与した自社株を遺留分の対象から外せる場合があります。
遺言は株式を寄せる有効な手段ですが、他の相続人の遺留分を無視すると侵害額請求という争いの火種になります。後継者への集中と家族の納得を同時に満たす配分が、円滑な承継の条件です。遺言・生命保険・民法特例を組み合わせ、経営権と公平性の両立を図ることが求められます。
6. 自社株の相続税対策をサポートする株式会社ヴィジョンの特徴
6.1 自社株や相続税の負担に悩む経営者に向くケース
株式会社ヴィジョンのサポートは、自社株の評価が膨らみ、相続や事業承継の税負担に頭を悩ませる経営者に向いています。とりわけ税負担が3,000万円以上に及ぶ層を主な対象としており、単発の節税では追いつかない規模の課題に対応します。
業績が伸びて株価評価が上がり続けている、後継者への株の渡し方が定まらない、納税資金の当てがないといった状況は、放置するほど選択肢が狭まります。決算期を迎えるたびに評価額が上がり、対策のコストも重くなっていくケースは少なくありません。相続が視野に入ってから慌てて動くと、使えるはずの手法が間に合わないこともあります。
こうした経営者にとって必要なのは、評価引き下げから納税資金、承継の設計までを一続きで考える伴走者です。個別の商品を売るだけの関係では、全体最適にはたどり着きにくいのが実情です。長期のパートナーシップを前提に方針を組み立てられる相手かどうかが、選ぶ際の分かれ目になります。
6.2 節税投資と不動産コンサルで自社株対策を支える強み
株式会社ヴィジョンの強みは、金融と不動産の両面から自社株対策を組み立てられる点にあります。本業の不動産事業で培った資産管理のノウハウを土台に、評価引き下げと納税資金の準備を一体で提案します。
主な強みは次のとおりです。
オペレーティングリースの活用:減価償却を通じた利益圧縮で、株価評価の引き下げを図ります。
不動産コンサルティング:資産の組み換えや有効活用により、純資産評価の圧縮と収益確保を両立させます。
自社検証体制:案内する商品は原則として自社で導入・検証したものや厳格な基準で選定したものに限ります。
長期の伴走:経営者との継続的な関係を前提に、承継完了までの方針を組み立てます。
節税だけを目的にした商品提案は、リスクの見落としにつながりがちです。
株式会社ヴィジョンは自ら検証した手法を軸に据えるため、机上の理論に偏らない実行可能な提案がしやすくなります。自社株評価の引き下げと相続・事業承継の資金準備を、無理のない形でつなげられる点に価値があります。
6.3 相続税対策の相談から実行までの流れ
相談から実行までは、段階を追って進めることで無理なく形にできます。いきなり商品を選ぶのではなく、現状の把握から始める順序が、後戻りのない対策につながります。
自社株の相続税対策は、次の流れで進みます。
現状把握を行い、株主構成・自社株評価の見込み・想定される税負担を洗い出す。
評価試算をもとに、下げられる余地と必要な納税資金の規模を数値で確認する。
評価引き下げ・納税資金確保・議決権集中を組み合わせたスキームを提案する。
合意した内容を実行し、承継完了まで状況の変化に応じて見直しを重ねる。
この流れの利点は、各段階で判断材料が数字として見える点にあります。最初に現状を可視化するからこそ、どの手法をどの順番で使うかを冷静に選べます。相続や承継は一度きりのため、実行後のフォローまで見据えた進め方が安心につながります。
7. まとめ:自社株の相続税対策は早めの準備から始めよう
自社株の相続税対策は、換金しにくい株式に高い評価がつく構造を理解することから始まります。放置すれば、納税資金の不足、遺留分をめぐる争い、経営権の分散という三つのリスクが同時に迫ってきます。評価引き下げ、納税資金の確保、議決権の集中という三本の柱を、時間軸をそろえて動かす姿勢が欠かせません。
評価引き下げには役員退職金や不動産・オペレーティングリースの活用、配当政策の見直しや生前贈与があり、納税資金には生命保険や金庫株が役立ちます。事業承継税制や遺言・遺留分対策まで組み合わせれば、経営権と家族の公平を両立させる備えが整います。どの手法も、株価が低いうちに早く動くほど選択肢が広がるのです。
自社の株価が上がり続けている、後継者への渡し方が定まらないと感じている方は、まず現状の可視化から取りかかってみてください。金融と不動産の双方に通じた専門家と組むことで、評価対策と資金準備を一続きで進められます。早めの準備こそが、会社と家族の双方を守る最も確実な備えになります。
自社株の相続税対策に悩む経営者へ、株式会社ヴィジョンの伴走支援
株式会社ヴィジョンは、金融と不動産の両面から自社株評価の引き下げと納税資金の準備を一体で提案します。案内する商品は原則として自社で導入・検証したものに限り、承継完了までの長期的な伴走を前提としています。
税負担が3,000万円以上に及ぶ規模でお悩みの経営者の方は、まずは現状の可視化からご相談ください。
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